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福岡高等裁判所 平成4年(う)360号 判決

右の者に対する法人税法違反幇助被告事件について、平成四年八月二六日福岡地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官森統一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、被告人及び弁護人上田正博提出の各控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官森統一提出の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから、これらを引用する(なお、弁護人は、被告人提出の控訴趣意書は量刑不当を主張する旨釈明した。)。被告人及び弁護人の各所論は、要するに、被告人を懲役八月の実刑に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのである。

そこで、原審で取り調べた証拠を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて検討するに、榮信株式会社(以下「榮信」という。)の代表取締役喜多堅及び常務取締役塚元健兒は共謀の上、榮信の不動産売買をいわゆるダミー会社の名義で行って榮信に売買利益が発生しなかったように仮装し、また、榮信が不動産を売却するに当たり、榮信と買主との間に右とは別のダミー会社が売買当事者として介在したように仮装して売上金額を過少に計上するなどの方法で、榮信の所得を秘匿した上、平成元年六月一日から同二年五月三一日までの事業年度における榮信の実際所得金額は一億〇二二五万三〇〇二円(その税額四〇〇二万一二〇〇円)、課税土地譲渡利益金額は二億九九三四万六〇〇〇円(その税額八九八〇万三八〇〇円)であったのに、右所得金額は欠損で、課税土地譲渡利益金額は零であり、これらに対する法人税額は零であって、既に源泉徴収された所得税額三五五円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告をし、榮信の右事業年度における正規の法人税額一億二九八二万四六〇〇円を免れたが、本件は、その際、被告人が、その情を知りながら、平成元年二月上旬ころ及び同二年二月上旬ころの二回にわたり、塚元に対し、ダミー会社の代表者を紹介して斡旋するなどして、前記犯行を幇助したという事案であるところ、被告人は、昭和六三年五月二七日詐欺罪により懲役二年六月、四年間保護観察付き刑執行猶予に処せられた(同年六月一一日右裁判確定)のであるから、特に自重自戒すべきであったのに、塚元からダミー会社の紹介・斡旋を依頼されるや、保護観察付き刑執行猶予期間中であったにもかかわらず、安易な考えから積極的に本件犯行に及んだものであって、被告人には遵法精神が希薄であるといわざるを得ないこと、被告人が本件犯行に及ぶに至った経緯・動機に格別酌量の余地はない上、その犯行の内容は悪質であり、被告人の幇助を受けて、榮信は多額の脱税をしていること、本件犯行により被告人の得た報酬も少なくないことを併せ考えると、被告人の刑事責任を軽視することはできない。してみると、本件は幇助犯であること、被告人が、今では本件犯行に及んだことを反省しており、今後は郷里に帰って、内妻及び子供のためにもまじめに働いて生活する旨述べていること、被告人が、原判決後、法律扶助協会に合計一五〇万円の贖罪寄付をしたこと、その他諸般の事情を被告人のために十分参酌し、かつ、共犯者に対する量刑等を考慮に入れて検討しても、本件は、被告人に対し刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとはいえず、原判決の量刑はやむを得ないところであって、これが重過ぎて不当であるとは考えられない。論旨は理由がない。

それで、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、刑法二一条を適用して当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の刑に算入することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 雑賀飛龍 裁判官 濱崎裕 裁判官 川口宰護)

平成四年(う)第三六〇号

○ 控訴趣意書

福岡拘置支所在中

被告人 藤髙豊

平成四年十一月二十六日

福岡高等裁判所第二刑事部 御中

平成四年八月二十六日福岡地方裁判所において法人税法違反幇助被告事件により懲役八月未決通算二十日の判決を受けましたが、右判決について、刑事訴訟法第三八一条同第三八二条の理由により控訴しましたので、左記のとおり控訴の趣旨を申し上げます。

控訴の趣旨

まず、今回の事件により国税局強いては、社会に対して多大なる御迷惑をお掛けした事を心より深くお詫わび致します。また、毎日が後悔と反省の日々を送っております。

早速ですが、量定不当の理由について述べます。平成元年十二月頃に、日本クレストの原田氏が、私と梛野氏に「不動産会社を作らないか」と誘いの話がありました。が、私は以前から不動産の仕事は性格的に私には向いていない思っておりましたので、元社員であった梛野氏に「この機会に独立してみる気はないか」と相談してみました。そして、数日経って彼が「私も三十代になったし、男になりたい。また、中古車センターとか商品販売をやってみたい」と、独立する夢と希望を語り、梛野氏は会社を設立することになりました。

会社設立に当り彼は、和に対して「会社設立を協力して頂けないでしょうか」と相談があったので、「私のできる範囲であれば協力しましょう」と彼に言いました。

当時、私の会社で休眠会社((株)永光)がありましたので、この会社を商号変更して、「エヌ、ケイ綜合開発株式会社」に梛野氏が変えました。そして、梛野氏は独立して頑張っていたみたいです。

私は、その当時、「クリーン食品有限会社」の社長である時津氏と協同で貿易と通信販売をやっていました。

その貿易の内容を詳しく書きます。

台湾から“乾燥ねぎ”を輸入して、5gから10g程度をパック詰めにして、コンビニエンスストアーと百貨店に卸して販売しようと、クリーン食品の時津氏と計画しました。

その結果、乾燥ねぎの輸入は時津氏が担当して、コンビニエンスストアーと百貨店の販路は、私が担当する事になりました。

私は、“乾燥ねぎ”の販路を築くべき走りまわりました。そして、辿りついたのが、八年来の付き合いがある塚元氏でした。塚元氏の話によると「今、私の会社では貿易をやっていて、主に中国で“ノリ”の養殖をやっている、そしてスーパーや百貨店にコーラとか海産物を卸しているので、おもしろい商品があれば何でも相談してくれ」と言ってくれましたので、私は、早速“乾燥ねぎ”の事を説明しましたところ、「大阪の百貨店で試験的に売ってみよう」と話がまとまり後は“乾燥ねぎ”が来るだけでした。

そんな、状況の中、平成二年だと思いますが、塚元氏から、「不動産の売買があるから相談に乗ってくれ」と電話が掛かってきて、私の事務所に来ました。そして、塚元氏が、「書類上、土地を買って直ぐ売るだけだが誰か契約書だけ作ってくれる会社はないかね」と相談があった。

この時、私としては、“乾燥ねぎ”の件がありましたので「何とか探してみます」と答えて、梛野氏の会社を紹介しました。

当時、私は執行猶予の身でありましたので物事に対して慎重に考えて行動しておりました。

しかし、私には塚元氏がやっている行為が悪い事だという事が理解できず、私としては恐らく節税の一種だろうと軽く考えていました。(良く商売人とか会社でやっている節税だと思い罪悪感がありませんでした)まして、紹介位であれば大きな問題はないだろうと浅はかに考えて塚元氏に梛野氏を紹介してしまいました。

さらに、私は塚元氏を人生の先輩として信頼しておりましたので、まさかこんな事件になるとは夢にも思っておりませんでした。

私は、今回の事件によって妻と子供と家と会社等を失ってしまい、失意のどん底に落ち、自分の浅はかな行動により、社会に迷惑を掛け、また妻子供達にも迷惑を掛けた自分自身を恨めしく思い死さえも考えておりました。

そんな状態のなか、「捨てる神あれば拾う神あり」という諺がありますが、十年前に別れた元内妻が面会に来てくれました。聞けばまだ結婚していないとの事でした。元内妻の住所氏名は左記の通りです。

氏名 河野あい子

住所 福岡市中央区白金二丁目十二-一

(彼女との間には、私の実の子供がいます。現在十二歳です)

一審の時、保釈で出ましたおり彼女に身元引き受け人になって貰いました。そして、彼女と話し合い、「もう一度やり直して、子供の為にも頑張ろう」ということになりました。そして、私約十年振りに子供に会い、今までの事を謝りました。「今からは、三人で仲よく暮らしてゆこうね」と三人で約束して裁判を迎えました。

私は、もう一度執行猶予になると信じていました。何故ならば、主犯格である喜多氏が執行猶予になり、準主犯格である塚元氏が起訴猶予になりました。以前、私が執行猶予中の罪だとしてもあまりにも判決のひらきがあると思います。

私はこの事件の中身も良く理解せず、塚元氏に対して“乾燥ねぎ”の件があった故どうしても断れずに紹介しました。

紹介料がほしくて梛野氏を紹介したのでは決してありません。もし、紹介料がほしくての行為であればもっと積極的に計画を練ってお金も、もっと多く貰っていたでしょう。

現場に行ったのも、私は行きたくなかったというか、関わりたくなかったので出来るだけ行かないようにしたのですが、梛野氏が免許も持たず車もなかったので私が現場まで連れて行きました。

それと、塚元氏が私にどうしても立ち合ってくれとの希望もあったので行った次第です。

紹介料の件ですが、梛野氏と辻山(現橋本)氏が私に渡したという金額が違います。

何故二人とも違うことを言うのか良く分かりませんが、私が貰った金額は、車の中で梛野氏から壱百万円を貰っただけです。

辻山氏においても壱百万円を貰っただけです。内五十万円は、辻山氏を紹介して貰った幸坂に渡しました。合計壱百五十万円を二人から受け取っただけです。

この紹介料についても、不当に得た利益ですが、税務署に申告して、すでに税金は払っております。

さらに、不当に得た利益を社会に還元して、少しでも社会に役だってもらえればと思い私の友人等に相談して、お金を借り入れをしまして弁護士協会に寄附しました。

そして、今回の事件を機会に河野と一緒になりまた、私の両親は年老いていますので親孝行の意味も含め、私と妻、子供、三人で四国の私の実家に帰り、会社に勤めながら実家の農業を手伝いこつこつと真面目に五人で暮らす事を夢見て厳しい拘置所生活を頑張っています。

以上の様な理由から控訴した訳です。

公平に裁判をして頂き、もう一度寛大なる判決を希望します。

平成四年十一月二十六日

福岡拘置支所在所

被告人氏名 藤髙豊

本人の指印であることを証明する

福岡拘置支所 看守部長 永智和郁

福岡高等裁判所第二刑事部 御中

平成四年(う)第三六〇号

法人税法違反幇助被告事件

被告人 藤髙豊

○ 控訴趣意書

平成四年一一月三〇日

弁護人弁護士 上田正博

福岡高等裁判所第二刑事部 御中

一、原判決は被告人に対して懲役八月未決勾留日数二〇日を算入した実刑判決を云渡したが、これは以下に述べるとおりの事由で量刑不当の誤りがある。

よって原判決は破棄のうえ被告人に対して執行猶予を附した判決が相当であると思料する。

二、(1) 被告人は搜査段階より現在まで容疑、公訴事実を認め(受領金額の食い違いがあるがそれは訴因ではない)自己の罪について反省し改悛の状は顕著である。被告人が述べているように、本件の遠因はそれを詳述すれば被告人が郷里松山市より福岡市で働くようになり色々の事業をしてきたが、資金が充分でなかったので福岡で知った交友関係を通じてした事業が殆どであった。そこで貸借の複雑な交友関係が生じ断ることのできない状況や又被告人自身のあせりなどが生じ身動きではない状況の下に本件は発生した。

(2) 被告人は右の状況より一日も早く脱却し素直で平和な生活をとり戻したいと努力している者であり将来は松山市の実家に帰り農業の傍ら他の職を得て以前内妻であった河野あい子と二人の間の実子との三人の生活をすることを決断している。

実家の両親も被告人ら三人を迎えることを喜んでいる。

(3) 被告人は本件所為の時には確かに甘い感覚で本件所為に及んだところ厳しい原判決の指摘により己の罪の重大性に遅まきながら気付き罪の償いを真摯に考えて被告人が得た不当な利得を返還することとした。

被告人は当審の終結時迄に金一五〇万円を福岡県弁護士会に贖罪寄附することを決め現在まで二回に分けて金一〇〇万円の寄附をした。

この原資は被告人の所持金ではなく第三者より借用して原審に納付していた保釈保証金の一部である。

三、被告人は上述のとおり改悟し、反省の度は顕著である。被告人の今後の生活においては同種事犯に限らず再犯のおそれは全くないものと思料する。

以上の諸情状をご斟酌のうえ原判決を破棄して被告人に対し執行猶予を附した裁判を求める次第である。

平成四年(う)第三六〇号

答弁書

法人税法違反幇助

藤髙豊

右被告人に対する頭書被告事件につき、検察官は弁護人の控訴趣意に対し、左記のとおり答弁する。

平成五年一月一三日

福岡高等検察庁

検察官検事 森純一

福岡高等裁判所第二刑事部 殿

所論は、要するに、量刑不当の主張である。すなわち、動機に同情すべき点があること、被告人が反省していることなどの理由により、被告人に対しては執行猶予の判決が相当である、というのである。

しかしながら、本件は、その情状を総合すれば、原判決のとおり実刑判決以外は考えられない犯罪であり、被告人の刑責も極めて重大であると言わざるを得ないから、原判決の量刑が重過ぎて不当であるとは認められない。

以下、その理由を述べる。

本件犯行態様については、原審で取り調べられた関係各証拠から明らかであるが、本件は法人税法違反の本犯者榮信株式会社が土地譲渡利益を秘匿するなどして脱税するに際し、いわゆる税金のかぶり屋であるエヌケイ総合開発株式会社の梛野清美や、有限会社フロンティア企画の辻山こと橋本清人を右榮信に紹介し、同会社の右脱税を幇助した事犯である。同会社は、税金を免れるため、同会社に代わって右エヌケイ総合開発が売買契約の当事者であるかのように装って、右榮信に売買利益が発生しなかったように仮装したり、不動産の売り主である同会社と買い主の間に、右フロンティア企画が介在したように仮装して売上金額を過少に計上したもので、脱税の手口としては、計画的かつ悪質であるが、被告人の本件行為がなければ、右榮信の本件脱税が成立しなかったといっても過言ではなく、脱税本犯に勝るとも劣らない悪質事犯というべきである。被告人の本件犯行の結果、脱税本犯である右榮信は、約一億三〇〇〇万円の多額の脱税に及んでいるのである。

また、犯行の動機をみても、被告人は、右梛野と相談のうえ、他人の不動産取引にダミーとして介在し、いわゆるダミー料を取得する事業を行うことを計画して本件犯行に及んでいるのであって、全く酌量の余地はないというべきである。現に、被告人は、本件の報酬として八〇〇万円もの不正な利得を得ているのである。

その上、本件は、被告人の詐欺の前科である保護観察付き執行猶予中の犯行である。

現在、右猶予期間は経過したが、本件各犯行は、右執行猶予の判決確定後比較的早い時期に敢行されたもので、自重しなければならない立場にありながら本件犯行に及んだもので、犯情は重ね重ね悪質である。

以上のとおりであり、結局、論旨は理由がないので本件控訴は棄却されるべきである。

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